189-参-災害対策特別委員会-4号-2015年03月31日-初版
○田中茂君
日本を元気にする会・無所属会、無所属の田中茂です。
早速質問させていただきます。
まず第一に、東洋ゴム工業の不良免震ゴム問題 について質問させていただきます。
国交省の発表によれば、東洋ゴムの不適合免震 ゴムを使用した建物は全国で五十五棟にもなりま した。
その中には、南海トラフ地震が起きたとき に高知県の司令塔になる県本庁舎、そして高知東 署及び安芸市の総合庁舎、さらに、神奈川の芸術 劇場や消防庁舎等、災害で避難場所にもなる可能 性がある公共施設も多く含まれております。
これらについて、三月の二十六日、つい最近な んですが、国交省は震度五強程度の地震でも十分 な耐震性があるとする見解を発表し、うち十七棟 について震度六強、七程度の地震で試算して耐震 性が確認できたとしております。
しかし、翌二十 七日、東洋ゴム工業は新たにほかの製品でも偽装 が疑われるということで百九十五棟の調査を行う と発表いたしました。
国交省は、既に大臣認定を受けている全ての免 震ゴムについて実態調査をすると発表しましたが、 性能評価に当たって提出した試験の記録調査や担 当者への聴取を含めたものは自社調査として企業 任せにしております。
東洋ゴムの性能評価は国交省が認可している指 定性能評価機関の日本免震構造協会が行いました が、この審査は書類だけであり、単純なミスやデ ータ不足は指摘できても偽装は見抜けないと言わ れております。
つまり、申請に技術的な根拠がな くてもデータなどがそろっていれば認定され、満たすべき基準性能の細部を国が定めているわけで はなく、あくまでメーカーの自主的な申告なわけ です。
東洋ゴム工業は、偽装を知ってから国交省へ届 け出るまで一年も費やし、その間に偽装と知りな がら十二棟の建物に製品を納入しております。
こ れは極めて悪質な行為と言えます。
不適合免震ゴ ムの存在は十年間も知られず、内部告発で初めて 発覚し、国交省は東洋ゴム工業からの報告がある まで事実を知らなかったわけであります。
新たに 分かった百九十五棟についても同様であります。
今回の耐震性調査も、企業の報告を受け、それで 確認できたとしております。
そこで質問なんですが、ほかのメーカーに対し ても実態調査を命じておられますが、これも各企 業任せであると聞いております。
監督官庁として は余りにも安易ではないかと考えざるを得ません。
そこで、現行の大臣認定の在り方、とりわけ災害 防止の安全、安心に関わる極めて重要な、重大な 機能チェックにおいて、言わば自己申告と言える 審査方法にされたいきさつをお聞かせいただけま せんでしょうか。
○政府参考人(杉藤崇君)
お答え申し上げます。
免震材料の大臣認定の申請に当たっては、御指 摘のとおり、あらかじめ指定性能評価機関におい て、申請しようとする免震材料が所定の技術的基 準に適合するかどうかについて、学識経験者等に よる性能評価を受けることというふうにされてお ります。
このような仕組みにしておりました理由でござ いますが、従来から、指定性能評価機関における 性能評価に当たっては、新技術の開発や民間の創 意工夫を阻害しないようにということで自社試験 データも認めてまいったところでございます。
今 回改ざんが明らかとなった免震材料につきまして も、性能評価を受ける際に申請者から提出された 試験データが正しいという前提の下、書面やヒア リングで審査がなされていたものということでご ざいます。
○田中茂君
言わば性善説というか、そういうこ とで自己申告制を取られたのかもしれませんが、 事国民の安全、安心に関わる検査であります。
そ の辺はよくお考えになっていただきたいと思って おりますが、まさに大臣もおっしゃっているのが、 これまで大臣認定は試験データは正しいという前 提でやってきた、国がどういう形でチェックする か工夫しなければいけないと、そのようにおっし ゃっていらっしゃいます。
内容は国民の生命、財 産に関わることであり、危急の課題であると思っ ております。
そこで、次の質問なんですが、東洋ゴム工業の 偽装問題は二〇〇七年の断熱パネルの試験データ 偽装に次いで二度目であります。
技術的審査は国 土交通省管轄の指定性能評価機関が実行し、建築 関係の認定申請は年間約四千件にも上ると、その ように聞いておりますし、国交省ではとても審査 ができないことは私自身も理解します。
が、今後 のチェック方法、また大臣認定の在り方について 具体的にお答えいただけませんでしょうか。
○政府参考人(杉藤崇君)
まず、今後の再発防 止策の大前提として、不正事案の原因究明という ことが非常に大事だというふうに考えてございま す。
御 指摘のとおり、今回の改ざんについて、東洋 ゴム工業は、データの補正がブラックボックス化 され、一人の担当者が改ざんし続けていたという ふうに説明しております。
これについて、同じ製 品開発部門に複数職員がいるのになぜ見抜けなか ったのか、品質保証部門においてなぜ見抜けなか ったのかなどの様々な疑問がございます。
こういったものにつきまして東洋ゴム工業に対 して原因を究明するよう強く求めているところで ございますが、国土交通省といたしましても、こ のような原因究明をまずきっちりした上で、再発 防止策等につきまして専門的な見地からも検討し、 国交省に対して御提言をいただくために、学識経 験者から成る免震材料に関する第三者委員会を設 置することにいたしました。
今週四月三日に第一回委員会を開催することとしてございます。
ちょっと現時点で具体的に、どういう見直しと いうことまでは現時点で申し上げられませんけれ ども、この第三者委員会における提言も踏まえて、 他に類似の事案が生じるおそれがないかを要因ご とに分析し、御指摘の認定制度の問題も含め、要 因ごとに必要な再発防止策を検討してまいりたい と考えております。
○田中茂君
二次災害になる可能性もあります。
国民の安心、安全に関わる検査には徹底した見直 しを行っていただき、国民が不安に陥ることがな いように信頼できる仕組みを早急につくっていた だくよう、私から強く要望しておきます。
次に、津波避難タワーについて質問させていた だきます。
全国の自治体で津波に備えた簡易な鉄骨タワー、 手軽なのは鉄骨造りで五メートル程度の高さだと 一千万ほどでできるということですが、かなり全 国に建設されております。
高層ビルや高台が少な い地域では、人工の高台として国もこれを推奨し、 各地域、沿岸部自治体で実情に応じて設置されて おりますが、多くは住宅地に近い浸水想定域内に 設置することが計画されております。
そこで、質問なんですが、この設置に関して明 確な国の安全基準がないと聞いております。
した がって、不適合免震ゴムと同じようなことがない とも限りません。
安全基準については検討中との ことですが、現在どうなっているのか、お聞かせ ください。
○政府参考人(日原洋文君)
お答えいたします。
津波からの避難のために、基本は高台に避難し ていただくことですけれども、それが間に合わな い場合に津波避難ビルあるいは津波避難タワーと いうことの整備というものも有効であるというふ うに考えております。
この津波避難ビルあるいは避難タワーにつきま しては、スマトラ沖地震を踏まえまして、平成十 七年に津波避難ビル等に係るガイドラインという ものを定めておりまして、そこでどういった考え 方で設置するか、その場合の構造面、特に津波は エネルギーを持っていますので、それに対してど う耐え得るかとか、高さはどういうふうに設定す るかというようなことも定めております。
ただ、その際に定められたものに対しまして、 平成二十三年の東日本大震災の教訓を踏まえます と、更に見直す点もあるということで、国土交通 省の方から、設計外力の方ですけれども、津波に 対し構造耐力上安全な建築物の設計法等に係る追 加的知見というものを定めていただきまして、そ れを都道府県に通知し、それを基に津波避難ビル 等の設計等が行われているというふうに承知して おります。
○田中茂君
やはり安全基準というものがないと かなり不安に感じる国民の皆さんいると思います ので、その辺は、ガイドラインを作っているとい うことは以前お聞きしておるんですが、安全基準 は明確に作っていただきたいと、そのように思っ ております。
また、近い将来予測されている南海トラフ地震 では、最も高い波は三十四メートルと想定されて おります。
タワーの強度や高さなど、数多くある 津波避難タワーの実態及びその安全チェック体制 がいかになっているのか、お聞かせいただけませ んでしょうか。
○政府参考人(日原洋文君)
お答えいたします。
今後の津波対策の検討を目的といたしまして全 国の市町村を対象としたアンケート調査を実施し ておりまして、平成二十六年に実施した調査によ りますと、全国の十三の道府県で百三十四の津波 避難タワーが整備されているという結果をいただ いております。
津波避難タワーの整備に当たりましては、先ほ ど申しましたガイドラインあるいは追加的知見を 基に、市町村等におきまして、設置場所や避難ス ペースの高さ、構造耐力上の安全性の確認をして いるというふうに承知しております。
○田中茂君
避難タワーは上り下り、階段とか、 スロープもあると思うんですけれども、障害者とか高齢者の方には大変じゃないかなと思うんです。
その辺も考慮して、今後どういうふうに改良され ていくのか、検討していただきたいと、そう思っ ております。
さらに、群馬大学の災害工学研究室の片田敏孝 教授、御承知のように、片田教授は津波てんでん こを子供たちに八年間教え続け、東日本大震災で は釜石の出来事を生んだことでも有名なことであ ります。
その片田教授によるシミュレーションに よれば、避難タワーは耐久性、高さ共に安全性に 限界があるが、場所によっては住宅地に近いため 誘導効果を持ちやすく、想定以上の津波が来た場 合、相当の犠牲者を生む危険性もあると。
そうい う報告があります。
この片田教授の見解について大臣の御見解をお 聞かせください。
○国務大臣(山谷えり子君)
群馬大学片田教授 によるシミュレーションでは、津波避難タワーが 設置された場合、住民等は津波避難タワーに向か って避難するため、津波避難タワーを設置せずに 住民等が高台へ避難する場合に比べて被害が大き くなるケースもあり、津波避難タワーの効果には 限界があるとの内容になっていることは承知して おります。
内閣府において作成した津波避難ビル等に係る ガイドラインでは、津波からの避難は高台避難が 大原則であるということを記載するとともに、津 波避難ビル、津波避難タワーは、地形的な条件等 により避難地の確保が困難な地域に対し、やむを 得ず適用される一時的、緊急的な避難施設として 記載をしております。
その上で、津波避難タワー 等の配置については、津波から遠ざかる方向へ避 難する場合のみを対象として検討するよう記載さ れております。
したがいまして、住民等に対しては、近くに高 台がなく津波の到達までの時間も僅かな場合など、 やむなく津波避難タワー等へ避難しなければなら ないときには、海から遠ざかる方向にある津波避 難ビル等へ避難すべきであるということを周知し ていくことが非常に重要です。
内閣府としましても、避難困難地域における津 波避難タワーの整備を促進するとともに、これら の津波避難における留意事項の周知等にしっかり と取り組んでまいりたいと考えております。
○田中茂君
ちなみに、地震学者の石田瑞穂さん ですか、彼女がおっしゃっているのは、津波タワ ーのような逃げるためだけの構造物を造り続ける のは現実的ではない、逃げる拠点として最適なの は歩いていける距離にある小学校と述べられてお ります。
小学校を数十年ごとに強化し、公共の場 としての使用を推奨されてもおられます。
このように、あらゆることを想定して、何が一 番大事かというと国民の安全、安心であります。
それを第一義としてあらゆる想定を考えていただ きたいと思っております。
次に、東京大学の技術研究所の津波危険地域に おける建築基準等の整備に資する検討、その中間 報告について質問させていただきます。
これも先ほどの避難タワーにも関与してくるん ですが、国交省の委託により東大技術研究所は津 波危険地域における建築基準等の整備に資する検 討を行って、その中間報告によれば、東日本大震 災において実際に利用された津波避難ビルの被害 調査で、想定浸水に相当する階の一階上までは被 害は受けたが、二階以上は安全でしたと、この事 実から、避難スペースの配置を検討する際には、 想定浸水の深さに相当する階の更に二階以上に設 ければ安全であるとしております。
また、津波避 難ビルを有効な避難施設とするには、より安全な 場所との位置関係、そこへの移動経路、先ほど大 臣もちょっとおっしゃっていましたが、移動経路 も含めて津波避難ビルの役割と限界が周知される ことが重要で、これが津波避難計画に位置付けら れることが必要だと考えます。
東日本大震災では、津波避難ビルに想定以上に 避難者が長く滞在することとなりました。
この提 言は極めて重いと思いますが、その後の避難ビル 及び津波タワーの建設に反映されているのか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(日原洋文君)
お答えいたします。
東京大学等において行われました調査におきま して、浸水階の二階以上ならばほとんど被害を受 けていないとの報告があったというふうに承知し ております。
元々のガイドラインにおきましては、浸水深に 耐える高さについて個別に検討するようなかなり 面倒くさい計算をすることになっておったんです けれども、実際の実態を見ると浸水階の二階以上 ならば被害を受けていないということが分かりま したので、そういった方で計算すれば安全側であ る、大丈夫であるということを通知して、簡易な 方法による津波避難タワーの建設、設計というも のを認めるようにしたところでございます。
また、配置につきましては、先ほど大臣からお 答えさせていただきましたとおり、きちんとその 趣旨を周知することが大事だというふうに考えて おります。
○田中茂君
今おっしゃったとおりに、確かに、 まず安全な高台や高い建物を目指す、避難経路を 明確にする、避難タワーはその途中で補完的に行 うことであるというのを周知徹底すべきだと、そ のように思っておりますので、是非その点はやっ ていただきたいと思います。
次に、大臣の所信表明について質問させていた だきます。
大臣は所信表明の中で、津波から人命を守るた めには住民の迅速な避難を促進するソフト対策が 重要であり、津波防災訓練を実施するなどにより、 津波防災の国民運動を全国に展開してまいります と述べられました。
私もまさにそのとおりだと思 っております。
東日本大震災の際の釜石市の鵜住 居地区防災センター、あのような悲劇がもう二度 とあってはならないと、私もそう思っております。
そこで、避難訓練は、様々な状況を設定して、 詳細な情報を徹底周知し、何度も繰り返して行う 必要があると思います。
前の質問でも話しました が、津波てんでんこを徹底して教えることで多く の子供たちが助かりました。
国民一人一人に参加 してもらう運動も結構ですが、現実的には大変だ と思っております。
各地区のまとめ役の人たち、 若しくは、いなければ地区ごとで誰かを選任し、 その方たちに対する危機意識を教え、行動訓練な どが有効かとも思います。
その内容を地区に持ち 帰り、実際に訓練を行うとか、そういうこともあ り得ると思っております。
そこでお伺いいたしますが、津波防災の国民運 動を全国に展開していくと大臣はおっしゃいまし たが、具体的に訓練などの内容について教えてい ただけませんでしょうか。
○国務大臣(山谷えり子君)
南海トラフ地震の 被害想定では最大で約二十三万人もの津波による 死者数が試算されていますが、住民一人一人の迅 速かつ主体的な避難行動により、津波避難タワー 等のハード対策の効果と併せ、死者数は約二割に 減少します。
こうした適切な避難行動を住民に取 っていただくためには、実際に行動に移してみる などの体験的訓練を重ねることで、一人一人が取 るべき行動を体に刻み込むということが大変に重 要だと考えております。
こうした認識の下、平成二十六年度には、十一 月五日の津波防災の日を中心に、内閣府と関係地 方公共団体で全国八か所において住民参加の避難 訓練を実施するとともに、内閣府の呼びかけに応 えた約三百団体の地方公共団体、民間企業等が津 波避難訓練や安否確認訓練等の訓練を実施し、約 八十万人の方々が参加いたしました。
平成二十七 年度におきましても、内閣府と関係地方公共団体 で全国十か所において住民参加の地震・津波防災 訓練を実施するとともに、昨年同様、地方公共団 体、民間企業等の訓練実施を促してまいります。
さらに、啓発ポスター、ピンバッジの作成配布、 日本郵便株式会社による記念切手の発行等も行い ます。
今後とも、様々な機会を通じて多様な主体に津 波防災訓練の重要性を訴えていくことで、津波防 災の国民運動を全国で展開してまいりたいと考えております。
○田中茂君
大臣、詳細な説明ありがとうござい ます。 時間が来ましたので、私の質問はこれで終わり にします。