189-参-法務委員会-12号-2015年05月21日-第2版
○田中茂君
日本を元気にする会・無所属会、無所属の田中茂です。
今日は、先月発覚したグーグル社地図表記改ざんに関して質問をいたします。
ちょうど一か月前なんですが、当時はドローンの事件もありまして余りこの件はクローズアップされておりません。
ただ、この件を見ていると、いろんな問題が内包しているんではないかと思いますので、質問させていただきます。
先月四月二十一日の報道によれば、米グーグル社が提供する地図検索サービス、グーグルマップで、二十日、多数の地図表記が改ざんされたとのことであります。
東京都の警視庁本部は恒心教警視庁サティアン、広島市の原爆ドームは核実験場と表示されていたほか、出雲大社にはサティアンの文字が書き込まれたそうであります。
また、皇居の一部施設はオウム真理教皇居支部道場に書き換えられていました。
改ざんは世界各国にも広がり、アメリカ・ケネディ宇宙センターは恒心教宇宙開発局、銃撃事件に遭ったフランスの新聞社シャルリー・エブド本社は恒心教パリ総合サティアンと表示されていたとのことであります。
また、先月十五日には、グーグルマップのホワイトハウスの中にエドワード・スノーデンという、皆さん御存じのように、元CIA職員のスノーデン氏の名前が表示されているという事態も発生いたしました。
既に修正はされておりますが、このエドワード・スノーデンをクリックするとグーグルプラスに作成されたスノーボードショップのページが表示され、住所はホワイトハウスと同じで、実在のショップ、店舗ではないわけでありますが、しかし、五つ星のレビューが付けられたり、すばらしい極秘情報の情報源だというコメントも投稿されております。
更にクリックすると、ホワイトハウスの内部が表示されたということでもあります。
民間のソフトではありますが、ここまで改ざんが可能なわけであります。
何者かが意図的に仕組んだこのようなネット上でのいたずらではありますが、今後もITの発展に伴い、様々な形態を変え、より悪質なものが広がっていくことは容易に推察ができます。
そこで質問なんですが、このグーグルマップの改ざん事案について、警視庁として、いつどこでどういう経緯で改ざんが分かったのか教えていただきたいと思います。
この問題、先ほど言いましたように、発生してから一か月でありますが、捜査対象となっているのであれば現在の状況を教えていただければと思います。
○政府参考人(辻義之君)
お答え申し上げます。
グーグルマップ上の施設等を表記する箇所に実際とは異なると思われる名称が多数書き込まれた事案についてのお尋ねでございますけれども、警視庁におきましては、四月二十日中に外部からの通報により同事案を認知したものと承知をいたしております。
その後、事実関係についての確認等は行っておりますけれども、個別具体的な対応状況についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
なお、一般論として申し上げれば、刑事事件として取り上げるべき事案であれば、警察としては、法と証拠に基づき適切に対処する所存でございます。
○田中茂君
多分単なるいたずらだとは思うんですが、私はこのグーグル改ざんそのものとは別の観点でちょっと考えたわけでありますが、この皇居へのオウムサティアンという書き込みについて、この記事を読んだとき、私はとても嫌な気分になったわけであります。
それは当然ながら、こちら、有田先生いらっしゃるので、オウム真理教についてはちょっといろいろ話すのははばかられる部分もあるんですが、オウム真理教、御存じのように二十年前の、ちょうど二十前ですね、の三月二十日、日本においても前代未聞のテロ行為を行った組織であります、宗教団体であります。
十三名の方が亡くなっただけではなく、負傷者も六千三百人を超え、今なおその後遺症に苦しんでいる方もいらっしゃいます。
このような事件を引き起こした宗教団体の名前が事もあろうに皇居の表記改ざんに使われた、これは、私には重く受け止めざるを得ませんでした。
それは一つは、以前、この宗教、オウム真理教、この最終攻撃は皇居、皇室であった、神道であったと、教祖を中心とした新たな国家樹立を考えていたとも言われていたからであります。
真相は分かりませんが、一般的に、カルト宗教が進化して既存宗教を全否定し、さらに己の宗教が絶対であるという信仰を持つということは歴史を見れば分かることでありますが。
そこで、全くこことは関係ないと思うんですが、現在のオウムの動向についてどのような把握をしていらっしゃるのか、警察、法務省の公安調査庁からもお聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(塩川実喜夫君)
お答えします。
オウム真理教につきましては、アレフと名のる主流派とひかりの輪と名のる上祐派を中心に活動しておりますが、両派とも依然として麻原彰晃こと松本智津夫及び同人の説く教義を存立の基盤とするなど、その本質に変化はないというふうに認識しております。
また、いわゆる団体規制法に基づき、無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が認められるとして観察処分に付されているものと承知しております。
こうしたことから、引き続き、公安調査庁を始めとする関係機関と緊密に連携し、オウム真理教の実態解明と組織的な違法行為の厳正な取締り、必要な警戒警備を推進してまいる所存であります。
○政府参考人(杉山治樹君)
公安庁からもお答えいたします。
お尋ねの団体は、現在もなお無差別大量殺人行為の首謀者である麻原彰晃こと松本智津夫を崇拝し、その影響を強く受けるなど、依然として本質的な危険を保持している上、引き続き閉鎖的、欺瞞的な組織体質が認められるところであります。
組織面においては、全国各地に多数の信徒と施設を擁しておりまして、活動面においても組織拡大に向けた勧誘活動を展開しているというふうに認識をしております。
公安調査庁におきましては、観察処分を適正かつ厳格に実施しているところでございまして、引き続き、教団の組織、活動の実態を迅速、的確に把握していく所存でございます。
○田中茂君
ネット上でもこの改ざんについては単なるいたずらだと、暇潰し、深い意味はないとも書いておりますが、まあ多分そうでしょう。
ただ、そのような考えを併せても、誰がそのようなことをしたかは分かりませんが、皇居の場所にオウム真理教皇居支部道場という表現は極めて悪質だと、そのように思っております。
今後の抑止のためにもできる限り調べていただきたいと、そう思っております。
〔委員長退席、理事熊谷大君着席〕
次に、このオウムと皇居の件はこれで終わりにしますが、グーグルに関しての質問に戻らさせていただきます。
今回の改ざん事案について、四月二十二日、グーグル側の調査結果として、ユーザーによるスパム攻撃によるものであると、スパム攻撃、嫌がらせですね、嫌がらせであるとの発表をしました。
また、ユーザーから提供された地図上の表記内容に間違いやポリシー違反があった場合、対象を削除する等の対応を行っているとの表明もありました。
企業として、当然、自己責任、自己規制を徹底していくことは、政府が民間企業に安易に口を出せないわけで大いに結構ではありますが、その後、グーグル社は、今回悪用された機能である、すなわち地図に載っていない店舗やランドマークをユーザーが登録申請できる機能については今後も制限などは設けないとしております。
さらに、グーグルマップにはユーザーから新店舗の開業や既存店舗の移転などに関する場所情報が寄せられていますが、その大多数は有益なものです、グーグルでは不正確な場所情報の検出、防止、対応を強化してまいりますと、どちらかというと、むしろグーグルはその有益性を主張したわけであります。
民間企業とはいえ、グーグル社の公共性の高さ、世間への影響力の大きさを勘案すれば、グーグル側の対応とは別に、政府としてこのような事態が発生しないような、まずは官公庁などの公の重要施設に対しての書き込み、書換えができなくするなどの仕組みを考えるべきではないかと。
さらには、このような悪用されやすいアプリに有益性を主張しているグーグル社に対しても何も手を打てないということを憂慮するわけであります。
〔理事熊谷大君退席、委員長着席〕
実は、この事業に関する質問を考える際に各役所に話を聞いてみましたが、新しい分野に関わるという事案ゆえに、どこの担当がするかも分からないという状態でありました。
担当が分からないこと自体がおかしいのではないかと思うわけでありますが、現在のIT企業の繁栄を見れば、確かに自由競争というのは進歩と発展を生み出したのは事実でありますが、その中で内なる道徳観というか、自己責任をもって行うのが最善であるとは当然私も思っております。
しかし、自由競争の中で法律規制に反した場合には、最終的なとりでとしての司法があることも疑いがありません。
別にグーグル社が法律に違反したというわけではありませんが、グーグル社の公益性とか世間への影響力を考えた場合に、何らかの形での未然の予防というか、このような今までにない案件に対しては未然の予防ということを考えるべきではないでしょうか。
先月には、このグーグルマップ上の情報の改ざんと同時に、先ほども言いましたように、首相官邸屋上に小型ラジコンヘリのドローンが発見されました。
約二週間にわたってそれが放置されたという事件も発生したわけであります。
どちらも実質的な被害が発生したわけではありませんが、アメリカのホワイトハウスでもドローンの不時着事件が発生するなど、各国で似たような事件が発生したことを考えると、日本国内でも同じようなことが発生する可能性は容易に想定できたわけであり、そういった事件に対する未然の防止などを含めた危機管理の体制がなっているのか、疑問を持たざるを得ません。
その意味でも、この二つの事件には非常に似た側面があると思いますし、国の威信にも関わるこのような事件に、その可能性に対してももっと問題意識を高める必要があるのではないかと、私はそのように憂慮しております。
そこで、今回のような新しい分野での新しい事案が発生したときに、速やかに対応できない、政府対応が追い付いていないのではと、これでは危機管理として大変問題があるのではないかと、そう思いますが、大臣の所感をお聞かせいただけませんか。
○国務大臣(上川陽子君)
御指摘をいただきましたこのグーグルマップの改ざんということで、これを未然に防止をすべきかと、こうしたことも含めまして未然に防止をすべきかというような御質問でございますが、第一義的には、やはり民間事業者によりましてのインターネット上のサービスということでございますので、この地図サイトそのものの運営の在り方に係る大変重要な問題であるということでございます。
その意味では、法務大臣という立場からこの問題についてお答えをするということについてはなかなか難しいというふうに思っているところでございます。
一般的な認識ということで、危機管理対応ということの御指摘がございましたけれども、やはり危機管理を必要とするような重要な事態が発生するというような場合におきましては、直ちに政府の適切な体制の構築と迅速な対処ということにつきましては、これは委員御指摘のとおりだというふうに思っております。
ただ、御指摘の、この事態そのものが事件性があるかどうかということも含めまして、これはなかなか一概には申し上げるということができませんので、その意味でも、この件について政府としてどう取り組むかということにつきましてのお答えということになりますと、なかなか難しいというふうに考えているところでございます。
危機管理、そしてこれから二〇二〇年に向けての様々な安全、安心の状況をつくり出していくという、そうした五年後の動きを見据えながら、体制の整備につきましては万全にしていくべきというふうに考えております。
○田中茂君
確かに民間企業に対していろんな口出しはできないというのはよく分かっておるんですが、グーグル社の場合にはかなり公益性も高いし、あと、国民に対するというか、世間に対する影響力も強いということを勘案すれば、何らかの処置は必要になってくるんではないかと。
特に、日進月歩といいますか、新しい技術やITが生み出す状況、そのサービスや商品に追い付くことが難しいことは重々承知しておりますが、前回の法務委員会でも、その法案でもありましたが、専門化、国際化、複雑化への対応として人員増も図っている、そのような法案が出ているわけであります、これは判事に対する増員であったわけですが。
このような新たな分野、事案に対して、先回りして法整備を含む危機管理を強化する体制を是非とも検討していただきたいと、そのようにお願いしたいところであります。
時間は余りましたが、私の今回の質問をこれで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。