189-参-法務委員会-13号-2015年05月26日-初版
○田中茂君
日本を元気にする会・無所属会、無所属の田中茂です。
今日は、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案について質問させていただきます。
先ほど来皆さんおっしゃっているように、これが平成二十一年に導入されてからほぼ六年になるわけですが、裁判員を経験した方々から、先ほどの、何度も言われていますが、アンケート調査でも、経験して良かったという回答が得られているようであり、市民感覚を裁判に取り入れると、当初の目的も徐々に私は果たしているように感じております。
それを踏まえ、今後も多くの国民の参加を得て制度を充実させてほしいとの私の基本姿勢を踏まえて、それにのっとって幾つかの質問をさせていただきます。
まず、先ほど来仁比先生もおっしゃっていましたが、やはりここで一番大事になるのはメンタルケアについてだと思っております。
これはあらゆる面で非常に重要なポイントになっていくとは思っておるんですが、それはなぜかというと、法律専門家でない民間人を裁判員として国家が選任し公的義務を負わせるということで、最も配慮すべきことだと私は思っているからであります。
裁判員は、先ほど来皆さんおっしゃっているように、日常生活では見ることがないような凄惨な写真、証拠写真を見なければならない。
また、自らが関わった裁判に関しては、生涯、その評議に関する情報をほかに漏らしてはならない守秘義務が課せられているわけであります。
これは大変な精神的な負担が掛かっていると、そのように思っております。
だからこそ、国家が国民に課す以上、それに対する十分なケアを行うべきであると、そう考えております。
そこで、四月十四日の委員会で、随分前なんですけど、質問回答で、裁判員経験者へのカウンセリング、五回まで無料ということの回答がありました。
裁判への関与が裁判員に与える影響という意味では、確かに個人差はあると思います。
がしかし、裁判員として参加することが国民の義務であり、基本的に正当な理由がない限り拒否できないというのであれば、国としてより以上のフォローはすべきかと思います。
ただ、この五回まで無料というのは、まあこれは私の勝手に思った解釈なんですが、なぜ五回なのか、その理由が分からないわけであります。
むしろ、深刻な症状になるほど回数もフォローも必要になるのではないかと思われますが、五回まで無料ではというのが無責任な印象すら受けかねません。
この五回まで無料という根拠をまず説明していただけませんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(平木正洋君)
お答え申し上げます。
メンタルヘルスサポート窓口の設置に当たり、メンタルヘルス対策の専門知識を有する民間業者に意見を聞きましたところ、カウンセリングを五回実施しても症状が改善しない場合には、対面カウンセリングを継続するのではなく、医師に引き継ぐことが相当であると考えられるとのことでございましたので、これを踏まえて五回という回数を設定したものでございます。
このような場合でありましても、電話によるカウンセリングを引き続き無料で受けていただくことは可能でございますし、必要に応じて医療機関の紹介も実施しておるところでございます。
○田中茂君
そのように説明していただければいいわけであって、あえてこういうふうに五回まで無料というのを強調する必要は僕はないのではないかと思っております。
そうしないと、変な誤解を与える可能性があると思うので、その辺、よく注意しておいていただきたいと思います。
やはりこのメンタルというのが一番大事なので、今後も、当初から、もう最初の段階から積極的に丁寧にカウンセリングを行うと、そういう姿勢でやっていただきたいと思っております。
先ほど来からずっとその説明をされているので、この件については、私は質問は終わりにしておきます。
先ほど若干、仁比先生がお話しされたように、証拠と裁判に関して、極めて微妙な立場になると思うんですけど、前回、裁判員裁判に裁判員として参加した女性が急性ストレス障害で仕事を長期間休まざるを得なくなったと、介護施設の運営会社からパートの契約を打ち切られて訴えていた裁判で、原告側は、裁判員制度が苦役からの自由を定めた憲法十八条などに違反していると主張し、国側は、最高裁が、二〇一一年ですが、同制度を合憲と判断している上、相当な理由がある場合は裁判員の辞退を認めるなど柔軟にしていると反論し、請求を棄却した事案がありました。
これについては原告の請求が棄却されたわけですが、その一方で、この元裁判員の方のストレス障害と裁判員裁判との関連性については認めております。
ストレス障害になった方には同情を禁じ得ませんが、このことにより、裁判員に選任されても辞退する人が増えるおそれがないとも言えないわけであります。
また、証拠に関しても、凄惨なものは除くなどの対策は講じられていると思いますが、必要以上にそのような証拠の使用を避けることによって、適切な判断を下すという、その必要な証拠が採用されなくなるのではないかという、こういうデメリットも考えられます。
実際に、被害者や遺族の方にもそういう意見があるとも聞いております。
そこで、裁判員の精神的負担軽減と適切な証拠等の確保という矛盾をはらみかねないこの問題については、どのような施策を検討されているのか。
先ほど、イラストを使うとか、いろんな説明をされているということでありますが、実際的にはどういうことをお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(平木正洋君)
お答え申し上げます。
証拠の採否や具体的な取調べ方法等に関しましては、それぞれの裁判体が事案に応じて判断することでございますので、事務当局はお答えする立場にはありませんが、例えば遺体写真の取調べ等に関する東京地方裁判所の申合せにおきましては、裁判員の負担のために必要な証拠を取り調べないということではなく、その証拠によって立証しようとする事実は何か、その事実の立証のためにその証拠が真に必要不可欠なものなのか、その証拠が裁判員に過度の精神的負担を与えることはないか、他の証拠で代替できないかなどを慎重に吟味し、真に必要な証拠であれば、取調べの方法を工夫するなどの配慮をした上で取り調べることになりますし、そもそも、判断のために必要がないとか、ほかの証拠でも代替できるという場合には採用しないという議論がなされたものと承知しております。
このような議論を踏まえまして、各裁判体におきましては、委員御指摘の要請をいずれも満たすよう、適切な判断を行っているものと思われます。
○田中茂君
この問題は本質性が、メンタルケアということで必要な証拠までも何らかの形でそれを見せないということになると、またこれも本末転倒な話になるわけですので、その辺は十分気を付けてやっていただきたいと、そう思っております。
そこで、先ほど来また皆さん質問をされていましたが、守秘義務契約についてちょっと一点聞きたいと思います。
裁判員になることをちゅうちょするその理由の一つとして、秘密を守り切れる自信がないという回答が調査結果でもあります。
裁判員経験者に対して、法曹のプロではないにもかかわらず、生涯にわたって厳しい守秘義務契約が課せられており、違反した場合には懲役刑まで設けられているという現状を考えると、当然二の足を踏むと、そういう人たちが増えるのも理解できますが、ただ、その一方で、九五%の裁判員経験者が、経験したことは有意義であったと回答している。
そういうことを見ると、裁判員としての経験は、その人にとっても価値のある経験であったとも考えております。
また、市民感覚を反映させた分かりやすい裁判という制度目標を考えると、もっと活発な議論をオープンにしなければ、裁判員裁判としての意味がないのではと、そのようにも考えているわけです。
先ほど来、どこまでが守秘義務でどこまでがいいのか、そういうことを言っていると、より活発な議論も、これ以上裁判員制度を推進させるためのネックになる可能性もあるので、その辺は十分、どこまでできるのか、どこまでできないのか、先ほど説明はいただきましたが、例えばそういうことを考えたときに、まず一点お聞きしたいのは、こういう守秘義務に関して、一般的に司法修習生に対してどのような守秘義務に関する教育とか研修を行っていらっしゃるのか、私、全く分かりませんので、その点、ちょっとお聞かせいただけませんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(平木正洋君)
お答え申し上げます。
司法修習生は、個人のプライバシーに深く関わる具体的な事件等を素材として法律実務を学ぶことから、裁判官、検察官又は弁護士が守秘義務を負うのと同様に、修習に当たって知った秘密を漏らしてはならない守秘義務を負うものとされております。
守秘義務につきまして、司法修習生には、修習開始前に送付する資料に明記して周知しているほか、修習開始後の講義、各分野別実務修習のオリエンテーション及び裁判等を傍聴する直前等の機会等の折に触れて、教官や配属先の裁判官等の指導担当者から具体的に場面に応じた指導や注意喚起を行うことなど、各人の責任の重さについて自覚を促し、守秘義務の厳守を心掛けさせているところでございます。
○田中茂君
今お聞きしまして、それはやっぱりプロに対するそれだけの研修を行うわけでありますよね。
ただ、一般の人たちに対して、研修も受けていない、そういう全くの素人の人たちに守秘義務をやれと、すぐにそういうことを言ってもなかなか難しいと思うわけであります。
そこで、一生涯にわたってこういう守秘義務をやるとか、そうじゃなくて、先ほど小川先生もおっしゃっていたように、どの程度の範囲まではできるのか、どの程度までは大丈夫とか、あと、どのくらいの期間になれば、もうこれは守秘義務を課せませんよとか、そういうものはあってもいいんではないかと私は思っております。
そうしないと、これをより更に、裁判員制度というものを進展、発展させていくためには、その評議会での話、どの程度までが大丈夫かということを踏まえた上で何らかの議論をしないことには、その後の発展が出てこないと思っております。
その辺について期限を区切るとか、その点についてはいかがでしょうか。
範囲については先ほど随分説明していただいたので、その辺は割愛させていただきたいと思うんですが、年でどのくらい切るとか、十年ぐらいでもういいのではないかとか、そういうのは御検討なさっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(林眞琴君)
御指摘の守秘義務の関係につきましては、裁判員制度に関する検討会においても取り上げられ議論がなされましたが、結論に至っては、現行守秘義務に係る規定を見直すことについては消極的な意見が多数を占めたものでございます。
そういったことから、今回、この検討会での議論も踏まえまして、守秘義務の見直しというものについては法改正に含めていないところでございます。
その点については、守秘義務の範囲にわたるもののみならず、その期間、守秘義務の継続期間に関することでも同様でございます。
いずれにしても、今後、こういった形で裁判員の経験者からいずれいろんな形で意見を伺うというような場合におきましては、この現行の守秘義務というものを前提としつつ、十分な御意見が伺えるような工夫が必要であろうかなと思っております。
○田中茂君
今後の裁判員裁判をより発展させるためにもその辺は是非検討していただきたいと、そう思っております。
次に、民間企業における裁判員休暇等の整備状況について質問させていただきます。
先ほど言いましたように、この裁判員制度、発足してから六年ほどたつわけでありますが、それまでに、当初の意図のように、国民が実際に裁判に関与し、結果に、先ほども言いましたように、アンケートにも表れているように、経験したことがよかったと、そういう評価も得ているわけでありますが。
そこで、裁判員は専門職ではない民間から選任されるため、ほかにも職を持っている方々も当然裁判員としての要請があるわけであります。
実際、調査では、職業として半数以上、約六割、この方たちが会社勤務となっております。
この方々が裁判員裁判に参加するためにどういう対応を取られたか。企業及び裁判員に対する調査結果はあると思うんですが、そういう中で、私が聞きたいのは、裁判員として参加することによって勤務先と協議した上で決定したのか。
また、平均として何日間裁判員裁判のための休暇を取得したか。
三番目が、休暇を取得した場合、有給休暇であったか無給休暇であったのか。
四番目が、長期にわたる審理に有給休暇を取得して参加した裁判員のケースがあったかどうか。
その場合、従業員に対する有給休暇の付与を使用者に対して義務付ける前提として、労働基準法では全労働日の八割以上出勤することが必要であるとされております。
これまでの最長では百日間にわたって裁判員を務めたケースがあったとのことですが、百日ともなるとかなり業務に支障を来すことが想定されます。
そのようなケースではどのような状況であったのか。
実際問題として、会社勤めで年間百日も有給休暇を取得することはなかなか難しいと思いますが、そういう、できる範囲で、そもそもこういう調査があるのか、この件についてもお聞かせいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(平木正洋君)
お答え申し上げます。
まず、委員御指摘の、勤務先を有する裁判員等は参加することについて勤務先と協議、決定した上で参加したのかという事項については、裁判所としては把握しておりません。
次に、委員御指摘の、勤務先を有する裁判員は参加に当たって平均何日間の休暇を取得したのかという点についても把握しておりません。
次に、三点目の、勤務先を有する裁判員が参加に当たって休暇を取得した場合、その休暇は有給休暇か無給休暇かという点についても、裁判所としては把握しておりません。
四点目の、勤務先を有する裁判員が有給休暇を取得して参加した長期審理の裁判員裁判のケースはあったか。
ケースがある場合、その状況はどのようなものであったかという点についてお答えいたしますと、裁判員のプライバシー等の問題がございますので具体的な詳細までは申し上げられませんが、ある長期審理事件におきまして、有給休暇や勤務先で設けられている裁判員を務める場合の特別有給休暇を利用して裁判に参加した裁判員や補充裁判員の例があることを最高裁として把握しております。
○田中茂君
法務省の方はいかがでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君)
法務省といたしましては、御指摘のような統計については把握しておりません。
○田中茂君
この調査で六割が企業、会社勤務の方ということになっておるわけでありますが、企業の協力というのは極めて重要だと、そう思っております。
これは企業に勤めている会社員のみならず、いずれはその奥様か、また子供たちも裁判員になる可能性もあるわけでありまして、いろんな角度から考えたときに、この企業の協力というのは、将来的な裁判員裁判を進展させるときにも企業協力というのは極めて重要だと、そう思っておりますので、先ほど来、何が一番大事かと。
今日、この裁判員裁判を啓蒙することだと、あらゆる分野で啓蒙していくこととおっしゃっていましたが、この会社の、企業の協力なくしてはその後の進展もないと思いますので、全く今までそういう調査をしていないということは考えられないわけでありまして、今後、その点十分注意をして、そういう調査もやっていただきたいと、そう思っております。
そこに関連して、会社経営者のみならず、自営業者の方の場合、あるいは育児中、介護の方の場合、どのような対応をされているのか、教えていただきたいと思います。
当然ながら、自分に無理が来ると思えばそれは自分で断ればいいわけなんですが、法務省なり最高裁なりがどういう対応をしているのか、ちょっとお聞かせいただけたらと思います。
○最高裁判所長官代理者(平木正洋君)
御質問の事項につきましては、最高裁判所としましては統計を取っておりませんので、把握していないということでございます。
○田中茂君
法務省の場合も同じでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君)
法務省におきましても、そのような統計については把握しておりません。
○田中茂君
先ほどと同じような話になると思うんですが、是非ともこれも将来のためには調査をするようにしておいていただきたいと思います。
また、これに関連してお聞きしたいのは、まず、裁判員に選任されれば、実際に評議に当たる日はもちろんなんですが、それ以外にも資料を読み込んだりするための時間を割くことになると思います。
そのための時間を確保すべく裁判員休暇制度などを整備している企業も一部にはあると私は知っておりますが、目下義務付けられているわけではありません。
仮に裁判員になった場合、業務上の負担や代替人員確保の難しさなどでは、大手よりも中小企業の方が困難ではないかと思っております。
その場合には、企業にも裁判員となった社員にも大きな負担が掛かると想像されます。
法務省としては有給休暇取得ができるように働きかけているとのことですが、これも強制力はありません。
裁判員制度が導入され定着する一方で、呼出しへの、先ほど来皆さんおっしゃっていますが、出席率や、関心の薄れも見られるわけであります。
誰しもが裁判員となる可能性がある今、裁判員候補として呼び出された場合、あるいは実際に裁判員として関与することになった場合に備えて弾力的に休暇を取れるよう、制度として支えることも必要ではないかと考えております。
これについて、国による国民、企業への義務化と、それに対する国の責任との調和等を含め、今後の方針をお聞かせいただけないでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君)
御指摘の点につきましては、現行制度の上では、まず、労働者が裁判員としてその職務を行う場合には、労働基準法第七条の規定によりまして休暇を取得することが可能であります。
また、裁判員法におきましては、労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことを理由といたしまして解雇その他不利益な取扱いをすることは禁じられているわけでございます。
これが現行法の範囲でございますけれども、この現行法の範囲を超えて、更に裁判員を、職務を行う場合の休暇の取得を促進する制度、例えば特別な有給休暇を義務付ける制度、こういったことを設けるかどうかにつきましては、やはり事業主側の負担等も考慮する必要がありまして、現時点においては慎重な検討が必要であろうと考えております。
いずれにしましても、こういった形での裁判員が参加しやすい環境を整えるということは非常に重要でございますので、法務省といたしましても、ホームページ等におきまして、事業者の方々に向けまして、裁判員等に選ばれた従業員の方に特別な有給休暇を認めていただくこと、これについてのできる限りの御配慮をお願いするということを求めてきたところでございます。
今後におきましても、最高裁判所や関係府省庁とも連携しまして、更に参加しやすい環境の確保に努めてまいりたいと考えております。
○田中茂君
先ほど来話が出ているメンタルケアに関しても、企業の社員というのはそこで勤めているわけですから、そういう意味でも、企業と密接に話をしながら進めていくというのは多分もうたくさん出てくると思っております。
そういう意味でも、企業とどういう点を協力し合っていけるのか、どこまでできるのか、どこまでできないのか、そういうものを含めて、もっと真剣にこの辺は検討していただきたいと、そう思っております。
次に質問したいのは、この間、私、司法制度改革審議会、二番の②で、国民の期待に応える司法制度、その中に、刑事手続に一般の国民の健全な社会常識を直接に反映させるとありますが、さきの法務委員会でも私の質問に対して、裁判員制度、この導入の趣旨ですが、これは、一般の国民が裁判の過程に参加して、裁判内容に国民の健全な社会常識がより反映されることにより、国民の司法に対する理解、支持が深まり、司法はより強固な国民的基盤を得ることができるようになるとの観点から導入されたとお答えになっております。
私、ちょっとこの辺で分からないのは、この国民の健全な社会常識と刑事手続との関連がよく分からないので、一体何を意味するのか教えていただきたいと思います。
国民感情であるとか市民感覚を裁判に反映させるというのであればすんなり入ってくるんですが、健全な社会常識というのは何を意味しているのか、市民感情イコール健全な社会常識という意味なのか、その辺ちょっと、少し脱線するんですが、お聞かせいただけませんでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君)
司法制度改革審議会意見書によりますと、一つには、一般の国民が裁判の過程に参加して、裁判内容に国民の健全な社会常識がより反映されるようになることによって国民の司法に対する理解が、支持が深まる、それによって司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになると、こういったことがうたわれております。
その一方で、裁判員が関与する意義は、裁判官と裁判員が責任を分担しつつ、法律専門家である裁判官と非法律家である裁判員とが相互のコミュニケーションを通じてそれぞれの知識、経験を共有してその成果を裁判内容に反映させるという点にあるとも述べられているところでございます。
これは、二つのことからは、国民の健全な常識といいますのは、結局、法律専門家ではない国民の知識、経験やそれらに基づく知見のことであろうかと思います。
こういったものが、裁判員と裁判官との共同の、相互のコミュニケーションを通じて裁判に反映されていくというふうに考えております。
○田中茂君
健全があれば不健全もあるし、常識というのが大体どういう常識なのかというのもいろんな意見があるところなので、非常に分かりにくい話、これ言葉だなと思ったものですから、ちょっとお聞きしただけですので。次に、もう時間になりますので最後にしたいと思うんですが、裁判員裁判で死刑判決を下され、最高裁でそれが破棄された二人の被告の事案についてでありますが、一審ではその前科を基に死刑判決を下したわけであります。
上位審では、一審は前科を重視し過ぎたという判断でありました。
日本の刑法の趣旨である更生を主眼として服役させていたにもかかわらず二人とも出所後すぐに再犯に至ったことは、前科に対する更生を目的とした量刑が必ずしも適切ではなかったのではと私自身は疑問に感じております。
ただ、私が憂慮しているのは、こういった事例が続くと国民に裁判員制度への不信感を抱かせる可能性があり、裁判員裁判への関心が薄れ、裁判員候補に選任されても嫌がる人が増えるだけでなく、裁判員裁判が形骸化する結果にもつながりかねないという点であります。
そこで、一般論として、今後の裁判員裁判を通じてなすべきことについてお伺いしたいと思います。
死刑という究極の刑罰も含め、裁判員の意見を重視することでも、何が何でも先例を踏襲した判断を下すことでもなく、市民感覚が反映された判断が積み重ねられることで、裁判員裁判を通じて適切な量刑を探り、国民の理解を得ていくことではないかと、そう思っておりますが、この点について大臣の御意見をお伺いしたいと思っております。
○国務大臣(上川陽子君)
まさに裁判員裁判の意義に直接関わるということで御質問がございました。
国民が裁判員として司法の分野に参加をするということの大変重い意味を考えてみますと、委員御指摘のとおり、こうした国民の皆さんの感覚が示されていくという、こうした裁判の積み重ねによって、そのことを大事にしていく必要があるのではないかというふうに思っております。
判決の積み重ねを非常に大事にしていくということを通して、更により良いものに改善をしていくということが何よりも大事だというふうに考えております。
○委員長(魚住裕一郎君)
田中君、時間です
○田中茂君
国民の期待を裏切るようなことはなく、裁判員裁判制度の充実を図っていくようお願い申し上げて、私の質問とさせていただきます。