新年、明けましておめでとうございます。
本年もご指導、ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
さて、昨年の新年には酉年のことについて冒頭に書かせていただきました。その中で、これまでの酉年は「政変の年」と言われているので、解散の可能性があると記しました。実際、12年前には小泉内閣の郵政民営化の選挙が行われました。昨年は安倍首相が突如衆議院を解散し、総選挙が行われました。結果はご承知の通り与党の大勝利に終わりました。しかし、選挙に至る過程で民主党が分裂して、新たに立憲改進党と希望の党が誕生するなど野党内の勢力図が大きく変わる「政変の年」になりました。
今年はどうなるでしょうか?
今年は戌年(いぬどし)です。この戌の本来の意味は「滅」で、草木が枯れることを意味します。そして、十干十二支(じっかんじゅうにし)で言えば戊戌(つちのえいぬ)となります。この組み合わせは、十干の戊が陽の土、十二支の戌も陽の土で比和(ひわ)となります。比和とは、同じ気が重なると、その気が盛んになるという意味で、よい場合はその結果がさらによくなるが、悪い場合はさらに悪くなるとされています。結局、注意を怠らないのが肝要と言う事でしょう。
ところで、今年一番の関心事はやはり北朝鮮問題になるでしょう。北朝鮮に対する制裁が効果を発揮すればするほど、軍事行動の危険が高まる可能性があります。だからといって日本にできることは残念ながらほとんどないことも事実です。その意味では非常に厳しく、ストレスを感じる1年となるでしょう。アメリカのティラーソン国務長官が、とにかく会うことが先決で「天気の話しをするだけでもいい」と、一国の、それも敵対国の外交のトップとは思えない発言をしました。彼が本当にそう思っているなら、何が起こってもおかしくないと、かえって怖さを感じた方も多かったのではないでしょうか。核武装による威力誇示に凝り固まった北朝鮮だけでなく、外交を平気で無視するアメリカにも、何をするかわからない不気味さが付きまといます。
国内政治における最大のイベントは、9月に予定されている自民党の総裁選挙でしょう。とは言え、総裁任期が3年3期、最長9年となったことや、政権の支持率が下がる状況の中で、去年、乾坤一擲の総選挙に踏み切って大勝したこと、トランプ大統領との良好な関係などを考えれば、安倍総裁を変える理由は今のところ見当たりません。マスコミは「岸破聖太郎」などと相手候補を挙げていますが、大勢は決していると言えるでしょう。
憲法改正も問題となっています。しかし、ことは9条の改正に関わりますから、その議論を尽くさずに強引に国民投票に向かうことには、国民の理解が得られないでしょう。私は憲法改正論者であり、参議院の憲法調査会の委員でもありましたが、憲法は一方的に国民を守るためだけにあるのではなく、国を守るためにもあると考えています。そのことが広く国民に理解されたうえで、国家とは主権・領土・国民という3つの構成要素がなくては成立しないということを踏まえ、国(主権・領土)と国民が一体となる憲法を作るべきだと考えています。そのためにも広範に渡って掘り下げた議論をしっかりとしてもらいたいものです。
では、経済はどうでしょうか。アベノミクスの失敗については、昨年大前研一氏の説をご紹介しましたように、バブル期を超えた長期間にわたる好景気と言われても、景気の良さを実感できない国民が多数存在することは否めません。しかし、今年も日本銀行の金融緩和政策に変わりはありません。そうだとすると富める者と貧しい者との差が、ますます拡大することになることでしょう。なんとなく、先述した戊戌(つちのえいぬ)の意味通りになりそうな感じがします。来年には消費税が10%に引き上げられることに決まっています。高齢化が進む中で年金受給額も減らされている今、庶民の財布の紐はさらにかたくなり、不安に満ちた自らの将来に備えることになるのではないでしょうか。
海外に目を転じれば、総体的に経済は好調に推移すると考えられています。昨年末にアメリカでは待望の大幅な減税が決まり、その効果が現われることと思います。ただ、政治的にはどうでしょうか。トランプ大統領は昨年末に、突然イスラエルにある米大使館をテルアビブからエルサレムに移転することを決め、世界各国から猛反発を受けました。日本では突然の決定のように思われましたが、トランプ大統領は大統領選での公約を実行に移したまでで、アメリカ国内では一部で評価されもしました。ただ、これまでの大統領とは全く違う政治手法を危惧する向きも多いと思います。
今年は中間選挙の年となり共和党が負ければ、トランプ大統領の力がさらに弱まることになります。もちろんそうならないように大幅な減税を決め、手を打ったとも言えるのでしょうが、行動の予測がしづらい大統領だけにこれから先も何が起こるかわかりません。
ヨーロッパでは、一大勢力となった各国の保守政党の動きがどうなるか、注意する必要があるでしょう。スペインのカタルーニャの独立闘争も相変わらず予断が許せません。またロシアでは3月に大統領選挙が実施されます。野党指導者の出馬を認めないなど強引な手法が目立ちますが、プーチン大統領の再選は確実で、さらに6年間、政権を運営することになりそうです。そうなれば総裁任期が延長となる可能性が強い安倍首相との間で、北方領土返還の話し合いが進展する可能性が十分あります。
さて、私が敬愛してやまない中曽根康弘先生は、今年の5月に満百歳を迎えられます。昨年末には外務省より胡耀邦総書記との会談の内容が公開されました。日本と中国が最も良好な関係にあったことを示す資料でした。
私も先生に負けないよう、国内外の動きを注視しつつ元気に頑張りたいと考えております。
皆さまにとりまして本年がよき年になりますようご祈念申し上げますとともに、今年も変わりませず何卒よろしくお願い申し上げます。