新年明けましておめでとうございます。
本年も何卒宜しくお願い申し上げます。
さて、今年は亥年です。易学に詳しい知人の話では、亥は十二支の最後にあたり、春から夏にかけて咲いた花が実をつけ、その実が地上に落ち、種が土の中に埋まった状態の時期といわれ、その状態は、次の世代につなぐ準備期間であることを意味するそうです。また干支(かんし)でみますと、今年は「己亥(つちのとい)」であり、相克(そうこく)の関係となるそうです。相克とは互いの良いところを打ち消すように作用することを意味しますから、なかなか思い通りには行かない1年になりそうだとのことです。占いでは、猪突猛進といわれる「亥」に似合わず、あまり積極的に物事に取り組まない方がよさそうな年といえそうですが、当たるも八卦、当たらぬも八卦、どうなりますか。
今年のキーワードが「準備期間」だとすれば、成る程と合点のいくことがいくつかあります。5月には新天皇が即位されます。改元後、新天皇が国民の期待に応えるいかなる天皇像を創られていかれるのか、まさに準備の期間となることでしょう。また、天皇制をどのように維持していくのか、議論を尽くして準備していかなければいけないと思います。
安倍政権にとっては準備期間などとはいっていられない、待ったなしの正念場の1年になるでしょう。政治日程では7月に参議院選挙が行われる予定です。10月の消費税率10%への移行が決まっている中での選挙ですから、過去の傾向からみれば与党には不利に働き、ダメージをどれだけ小さくできるかの選挙になるのではないかと思われます。すでに政権与党は、消費税率引き上げによる消費の低迷を防ぐために、中小小売店でのキャッシュレス決済に対するポイント還元など2兆円を超すあの手、この手の景気対策を考えています。そんなに予算をかけるなら再々延期をしたらどうかという意見が出るのも、不思議ではありません。
新年早々の1月には日米貿易交渉が始まります。日本の主張する物品貿易協定(TAG) か、米国の主張する自由貿易協定(FTA)か、日米で思惑が違うようですが、米国の出方次第では新年早々、日本経済に暗い影を投げかけることが懸念されます。すでに年末には株価が一時2万円台を割り、年始の大発会では1万9500円台となりました。7日にはまた2万円台に乗せましたが、米国と中国の貿易摩擦が一定の解決をみるまで、不安定な状況が続くだろうというのが一般的な見方です。日本銀行が年間6兆円も買い支えているにも関わらず、株安状態が続けば景気に大きく影響し、政府が日本銀行と進めてきた経済政策が、失敗に終わる危険性をはらみます。さらに年明け早々、米国やアジアで円高が進んでいます。これまでの日本の好景気は、政府の円安誘導が功を奏して生み出されてきた面があり、円高が続くようなことになれば輸出に影響が出て、日本経済は深刻な打撃を受けることになります。
外交関係ではロシアとの平和条約締結と、歯舞諸島・積丹島の2島返還がかなり現実味を帯びてきました。すでに、安倍首相とプーチン大統領の間では話がついていると指摘するロシア外交の専門家もいます。同専門家によれば、これまでの政府が主張してきた4島返還ではなく、2島になったことの是非を国民に問う形で「北方領土解散」が行われ、7月予定の参議院選挙が衆参ダブル選になるだろうということです。
これまでの安倍首相のやり方をみれば、あながちあり得ない話でもなさそうな気がします。事実、1月の訪ロを経て、6月に大阪で行われるG20で合意というシナリオが描かれているとの説もあります。苦しい選挙になることが予想される参議院選挙前に、安倍首相がなんらかの手を打つことは十分考えられ、すでに衆参ダブル選挙を口にする政治家も少なくないようです。
徴用工問題や、自衛隊の哨戒機に対する駆逐艦によるレーダー照射事件など、あまりに無責任ともいえる韓国政府の対応に、国民の嫌韓感情は高まりと広がりを見せています。今回、日本は毅然たる態度を取り続けるべきです。日韓は同盟国関係ではありませんが、軍事情報包括保護協定を結んでいる重要な関係にあります。また2国ともアメリカと同盟関係を結んでいて、日本と韓国は、アジアにおいて同じ自由市場経済を推進して行く要でなくてはなりません。韓国とのもめ事の拡大が国益に利する訳がありません。
だからこそ、今回の二つの問題(徴用工、レーダー照射)を、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がどの様に考えているのか、そしてまた自国(韓国)を導こうとしている方向性を明確に示さなければ、次の段階に進めることはできないでしょう。それが示されないのであるなら、日本はアジアの自由民主主義、自由市場経済を守る観点から、2国間の問題にせず米国を始め先進諸国、アジア各国を巻き込むように働きかけていくべきです。この件は、北朝鮮の拉致問題にも複雑に影響し、解決に向かって進むことを困難にさせることも考えられます。実際、拉致家族問題はあれほど騒いだにもかかわらず、解決への道筋が一向に見えてきません。
6月には中国の習近平国家主席の訪日が予定されています。ファーウェイ事件が示すように米中関係がきな臭いなか、日中の友好関係構築は大きな意味を持ちます。中国との友好関係については、日本の利益にならないという反対論をはじめ様々な意見がありますが、米中関係や世界情勢を注意深く見守りつつ、日中の新たな関係を結ぶことは経済のみならず、世界平和に資するものと考えています。
国内に目を向ければ、昨年の臨時国会の会期末に行われた強引な国会運営、発言や資金関係など質が問われる大臣、答弁が問題となるような大臣達など内閣自体の薄っぺらさが露呈しました。1月から始まる長丁場の通常国会を乗り切れるのか不安があります。
ところで、安倍首相は元旦に2019年の年頭所感を述べ、「戦後日本外交の総決算」を果断に進めていくと述べました。かつて中曽根元総理が掲げた「戦後政治の総決算」によく似たフレーズです。元総理が掲げた「戦後政治の総決算」とは、吉田茂が始めた経済至上主義によってもたらされた身勝手な一国平和主義を打破し、利己主義を排除してより高い次元へ国民を引っ張っていこうとしたものです。また、国際的にはレーガン米大統領、サッチャー英首相と共に新保守自由主義を追求しました。そしてその結果、ソ連の崩壊がもたらされたのです。それから30年が過ぎ、日本人の考えも、国際的な日本の立場も大きく変わりました。さて、安倍首相の「戦後日本外交の総決算」として挙げられたのは北方領土、拉致家族、中国との関係だったと思いますが、国民の期待に沿う、納得のできる総決算をしていただくことを望みます。
新しい一年の始まりに際し、懸念される部分ばかりを取り上げた感もありますが、ぜひ皆様も、この一年の政治、経済の動きを冷静な目線で注視し続けていただきたいと思います。