新型コロナウイルスの感染者数が急激に増加し、第2波が押し寄せて来ています。病院の受け入れ態勢が十分なのか気がかりです。前のFacebookで書いている様に抗体・ワクチンが出来るまでの最大の防波堤が病院です。医療崩壊が起きないように危機感を持ち万全を期して頂きたいと思います。
過去にアフリカなどで感染病対策に従事された山本太郎・長崎大学熱帯医学研究所教授は、新型コロナウイルスについて次のように語っています。「ウイルスを消滅させることが勝利だとすれば、恐らくいつまでも勝利はないでしょう。ウイルスとはつきあい、共存していく相手だと考えた方がいいと思います」。また、「ウイルスは宿主、つまり感染する生物がないと生存できません。だから最終的には、宿主と安定した関係を築くことがウイルスにとっても有利なわけです。宿主が環境適応性を高めて生存率を高める方向に、ウイルスが働きかけている可能性もあります」。教授によればウイルスは、「何千万年も昔から進化の原動力」になっており、「哺乳動物の子宮内にある胎盤は、遠い祖先が感染したウイルスが残した遺伝子の働きでつくられたといわれます。胎盤はウイルスが人間などに感染するために持つ免疫抑制機能を受け継ぎ、胎児を異物として拒絶しようとする母体の働きから守っているといわれるのです」。ウイルスなしでは人類の生存はなく、哺乳動物の進化に大きな役割を果してきたということです。
中曽根康弘先生は著書『日本人に言っておきたいこと』(PHP研究所1998年)の中で「『私』という存在は、大宇宙の中で生かされている小さなチリにほかならないと思う。大宇宙の中に地球が生まれ、海ができ、その中から微生物が発生し、陸へ渡って爬虫類となり、猿になり、人間になった。私はその延長線上のひとかけらなのである。そうであるならば、人間も植物も動物も宇宙の一片にすぎない。人間が万物の霊長であるというのはおこがましい話であって、宇宙に生きるものは皆仲間であり片割れである。私にはそういう感じがしている」と書いています。
先生によれば、大宇宙の中には何か大きな摂理が働いていて、「調和と均衡、バランスが保たれながら宇宙は運行しており、すべての生き物はその恩寵と調和の中で生きている。闘争も大調和の中の過渡的現象である」。先生からすれば、コロナによる混乱も大調和の中の過渡的現象ということになるのでしょう。
先生は宇宙大自然はふるさとであり、これとの調和の中で、生きとし生けるものと共存しつつ生きることを度々述べています。八百万の神がいるように多神教の日本人にとっては、民族や文化の垣根を超えた世界との共生は受け入れやすい考え方なのかもしれません。
先生は、私たちは地球という小さな星に生まれ、死を迎えてふるさとの宇宙に帰還すると考えていました。「湯の花を もろてに山の 春惜しむ」と俳句を紹介し、「温泉につかっているとき、私はある種の感動に満たされたことがあった。私も宇宙の大きな力の中で生まれ、温泉も同じように宇宙の中で生まれたものである。その仲間の恩寵の中で温められ、癒されている喜びであり、私も温泉の湯も『一にして二ならず』である。(中略)ああこれは仏様が地球の中で作って私を温めている、この湯の花も私も同じ仲間なのだ。宇宙から生まれたものなのだ」と書いています。
コロナウイルスもまた大宇宙の摂理の働きの中で生まれたものです。これからの人類の進歩を考えれば、その成長過程にコロナウイルスも欠かせない要素なのかもしれません。冒頭に「ワクチンが出来るまで」と書きましたが、有効なワクチンができれば、それでウイルスとの関係が終わるわけではありません。ワクチン完成後のウイルスとの共生を説く学者は少なくありません。ではどのような形で共生できるのか、そのために必要な社会医療体制や都市の構造改革、働き方や学び方、意識改革等々をどのように行うのか、そしてその維持はどうすれば可能なのか。人類が協力して、地球規模で考える必要があります。