○田中茂君
みんなの党の田中茂です。
今回の日豪EPA交渉大筋合意は大変意義のあるものであり、双方にとっても多くのメリットをもたらすことになるであろうという考えには基本的に同意いたします。
また、オーストラリアは、先ほど大臣がおっしゃったように、アジア太平洋地域における日本の重要な戦略的パートナーであり、貿易、投資を始めとして関係を強化させることに、それにも同意いたします。
本協定交渉は、そもそも二〇〇三年に日豪EPAの共同研究が始まり、二〇〇七年に第一次安倍政権とハワード政権の間で交渉が開始されましたが、二〇〇七年四月から二〇一二年六月まで約十六回の交渉会合を重ねたが、合意には至りませんでした。
それが、今年四月に大筋合意に至ったわけであります。
まず最初に、そこに至るまでの七年の歳月にわたり多方面の交渉を重ねてきた関係者の方々の継続した粘り強い取組に感謝の意を表したいと思っております。
質問ですが、オーストラリアは、農産物、鉱物の輸出大国であり、二〇一三年度の統計を見ると、日本から輸出が一・七兆円に比べ、日本への輸入がそのほぼ三倍の五兆円となっております。
EPAのこれまでの交渉相手国の中で重要品目の取引量が多い相手国であり、非常に重要かつタフな交渉であったと思われますが、合意に至るまでに足掛け七年も掛かった理由は何か、七月に署名に至った要因は何か、お聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(岸田文雄君)
委員御指摘のように、この日豪EPA、二〇〇六年十二月の日豪首脳電話会談において交渉の開始が決定されました。
そして、その後、二〇〇七年四月から交渉がスタートして、七年間にわたり計十六回の交渉会合が開催され、非公式の実務者レベルの協議も含めまして精力的に交渉が行われてまいりました。
先ほども答弁の中で申し上げましたが、日豪EPAの中には、貿易ですとか、投資ですとか、政府調達、知的財産、あるいは競争、幅広い分野が含まれています。
また、日本と豪州との間では多くのセンシティブな品目があって、国内産業への影響を極力回避しながら国益にかなう最善の道を追求しなければならない、こうした条件の中で長く厳しい交渉を続けてまいりました。
そして、七年の歳月を費やした後、この度合意に至ったわけですが、この合意のきっかけというものについては、具体的に何がきっかけだったかと申し上げるのはなかなか難しいとは思いますが、結果としましては、特に両首脳間で最も良い形で合意できるよう両国政府が精力的に取り組み、今年四月のアボット首相の訪日の際の日豪首脳会談において大筋合意を確認し、そして本年七月の安倍総理の訪豪の際の日豪首脳会談において署名を行った、こういったことでありました。
このように、両国の首脳間の対話がこの日豪EPAの合意における大きな弾みになったというのが事実ではないかと考えます。
○田中茂君
ありがとうございます。
確かに、二〇〇七年から二〇一三年の間は、豪州は日本と距離を置いていた労働党政権下であったわけですが、この間、豪州は重要品目の関税全廃を強硬に要求し続けたと記憶しております。
このことが協定の作業がまとまらなかった一因ではなかったかとも推測されるんですが、今大臣おっしゃったように、今回、二〇一三年、アボット首相、自由党が政権を取って、安倍首相とアボット首相の友好関係はもちろん知られるところであります。
今回の協定がいい関係の更なる構築という流れに結び付くことは理解しております。
政治が主導することで物事が決まることは適切なアプローチであるとも考えます。
がしかし、戦略性がないと、後の始末に困ることもあります。
本協定への豪州の労働党から自由党への政権移行の影響があったように、今後の見直し作業に政治体制とそのタイミングが大きく左右されていく可能性もあると考えます。
特に、日豪両国の関係は、経済協力と底辺でつながっている安全保障や軍事協力、さらにこれから豪州がEPAを結ぼうとしている対中国政策、これらに関わってくると思っております。
当然、背後には米国の存在があり、米国の巨大な影響力の下に日豪の軍事協力関係も出てきていると私は思っております。
今回、日豪EPA条約と同時に、日豪の防衛装備品及び技術の共同開発も取り組まれております。
この件でもアメリカは、潜水艦関係の共同研究に加わる可能性が出てきております。
そういう報道があったのは記憶しておりますが、他国への実質的技術漏れなどの問題はないと思いますが、防衛装備移転三原則には、目的外使用及び第三国移転に係る適正管理の確保の項目に、原則として我が国の事前同意を相手国政府に義務付けることとするという記述があるものの、部品等を融通し合う国際的システムに参加する場合、部品等をライセンス元に納入する場合等においては、仕向け先の管理体制の確認をもって適正な管理を確保することも可能とするとなっております。
今回の共同研究などの場合、実質的に我が国からの管理はできない状態になり、技術の漏えいなどの懸念も想定されるのではないでしょうか。
また、この点に関して、管理体制の確認とはどのような手続を想定しておられるのか、お聞きしたいと思います。
さらに、防衛省装備政策課は、新たな防衛装備移転三原則では、ライセンス元に部品を納入する場合、第三国への移転に日本の事前同意を義務付けていないと説明したという話もあります。
また、三原則では移転を禁止する先として紛争当事国となっていますが、現時点でその対象となる紛争当事国とはどこを想定しておられるのか、その辺についてお聞かせいただきたいと思います。
○副大臣(左藤章君)
今先生から御指摘がございました防衛装備移転三原則では、防衛装備の海外移転に際しては、原則として、国際約束により、目的外使用及び第三国移転について我が国の事前同意を移転先の政府に義務付けております。
なお、今お話あった豪州との間ですが、船舶流体力学分野に関する共同研究を今特定しております。
その詳細については今検討中でございます。
そして、一般論として申し上げれば、外国政府との防衛装備に関する共同研究を行う場合も、防衛装備移転三原則に従って、目的外使用及び第三国移転について我が国の事前同意を移転先の政府に義務付けております。
また、先生御指摘のあった豪州との防衛装備、技術協力を進めていく上で、我が国の防衛技術が適正に管理されるか、これが大前提でございますし、相手国の戦略的な関係についても検討するなど、国家安全保障会議で審議をしっかりやって、そして政府全体としてしっかり対応をさせていただきたいと思っております。
○田中茂君
最後の質問で、紛争当事国という、何かそれを想定されているのか、ちょっとお聞かせいただければと思うんですが。
○政府参考人(吉田正一君)
お答え申し上げます。
四月一日に閣議決定されました防衛装備移転三原則では、紛争当事国ということで定義規定を置いてございまして、武力攻撃が発生し、国際の平和及び安全を維持し又は回復するため、国連安保理がとっている措置の対象国をいいますというふうなことで定義をさせていただいてございます。
○田中茂君
現段階では特定の国というのは存在していないということで、それであるならば、かえって技術漏えいなどの心配もされると思っております。
現在の良好な日豪関係が続くことが大変望ましいのですが、先ほど私言いましたように、今後、豪州は中国とのEPAを結ぼうとしております。
そういうことも踏まえて、今後の見直し作業というのは、このような論点を踏まえた上でより包括的、戦略的に進めていただきたいと、そう思っております。
次に質問させていただきますが、この日豪EPAの大枠合意には、先ほど来から質問が出ておりますが、日本の市場における競争力に重大な変化がある場合には、オーストラリアの原産品に対して同等の優遇を与える観点から見直しを行うとの項目が盛り込まれております。
これは、TPP交渉等のように、日本が第三国と国際協定を結んだことによってオーストラリアの原産品に影響が及ぶということであると考えますが、そこで質問なんですが、TPP交渉では、二国間で決めた関税撤廃、削減の合意を他国に対しても与えるかどうかをめぐっていまだ各国が対立しており、結論が出ておりません。
そこで、日豪EPAの見直し条項の、重大な変化のある、その箇所ですが、どのような経緯でこの規定が枠組み合意の中で盛り込まれる結果となったのか、また、何をもって重大な変化とみなすのか。
当然話合いをされていると思いますが、定性的要件や定量的要件など判断基準があるのか、オーストラリア側とどの程度まで協議しているのか、お伺いしたいと思います。
また、それとは別に、外務省としてどのような基準を想定しておられるのか、お聞かせいただければと思います。
○国務大臣(岸田文雄君)
お尋ねの見直しの対象となった品目は、特に豪州の関心が高い品目であり、交渉の中で豪州側の要求、大変厳しいものがありました。
このため、交渉の結果として、将来的に、我が国が第三国との国際協定に基づいて当該第三国に与えた特恵的な市場アクセスの結果として、豪州産品の日本市場における競争力に重大な変化がある場合には、協議結果が何ら予断されないとの前提の下、見直しを行うということを受け入れることとなった、こういった経緯がございました。
仮に見直しを行うにしましても、これは協議を行うわけですし、結果につきましては協議の結果でありますし、その見直しにおいて何らかの変化が生じるとした場合にも、我が国が合意しなければその結果にはつながりません。
予断を持ってその結果について申し上げることは控えなければいけませんが、その上で申し上げれば、見直しを行う際には、我が国が第三国に与えた特恵的な市場アクセスの結果として、豪州産品の我が国における競争力の重大な変化があるか否かを、この産品をめぐる具体的状況に即して個別具体的に判断するということとなります。
よって、具体的なケースをそれぞれしっかりと判断した上で我が国としての決断を行う、こういったことになると存じます。
○田中茂君
協定には、食糧用麦、牛肉、乳製品、砂糖については、協定の効力発生の日の後五年目の年又は、先ほど大臣がおっしゃったように、両締約国が合意する他の年のいずれか早い年において見直しを行うこともあります。
これは、協定発効後五年目ではなく、両締約国が同意すれば協定が発効したその年からでも見直しが可能になると、そういうことであると思いますが、先ほど来言っておりましたが、政権の思惑次第では来年からでも見直しができると、まあそれは極端な話かもしれませんが、そうなると、TPP交渉が極めて重要な要因になってくると思いますので、この点注意深く対応していただきたいと思っております。
次に、オーストラリア産牛肉の安全性と関税率の引下げについてお聞かせいただきたいと思います。
今回のEPA交渉では、最重要品目であった牛肉の関税が段階的に引き下げられることで決着いたしましたが、この牛肉についてお伺いします。
オーストラリア国内では、成長ホルモン剤は安全で牛肉産業にとって有効であると国や食肉産業は主張しており、オーストラリアのMLAでは、安全性と品質が確保されており、ホルモン剤を使って育てられた牛の肉を食べても健康に影響はないと、そのように言っております。
これが正しいかどうかは分かりません。
正しいかもしれないし、そうでないかもしれません。EUでは一九八九年以降、ホルモン剤が使用された製品の輸入が禁止されており、中国でも食用の動物に使用することは認められていません。
そこで質問ですが、交渉過程でホルモン剤の使用についての制限等の話はなかったのか。EUでは成長ホルモンの使用は一切禁止されているため、先ほど言いましたように禁止されているため、オーストラリアがEU向けに輸出する牛肉に関しては、ホルモン剤を使用していないことを政府が保証したもののみとなっております。
EUのように、ホルモン剤を使用しているか使用していないかをオーストラリア政府が担保するような仕組みをつくることはできないのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(齋木尚子君)
お答え申し上げます。
牛肉につきましては、豪州側の関心が交渉の中でも極めて高い品目であったこともありまして、日豪間の交渉において様々な論点について議論が行われました。
しかしながら、具体的なやり取りの詳細について御説明することは、豪州側との信頼関係にも鑑みて差し控えさせていただきたいと思います。
○田中茂君
これは極めて安全性に関わる問題でありまして、この日豪EPAの大筋合意の時期なんですが、これは、政府発表のとおり、日豪首脳会談の四月七日であります。
それに先立つこと一週間前の四月一日に、ロシア政府は、豪州からの冷凍牛肉の輸入を四月七日以降停止すると発表いたしました。
これは、ロシアで使用が禁止されているトレンボロンという成長促進ホルモン剤が豪州産牛肉から検出されたためと聞いております。
今後どうなるか、いつまで輸入禁止となるか分かりませんが、ロシアに対する冷凍牛肉の輸出に赤信号がともり、オーストラリア政府としては何としてでも日本とのEPAを締結させ、牛肉の輸出拡大を図る国内的な必然性があったのではないかと疑うこともできます。
豪州内では、大手スーパーの一社が消費者の要望を受けて成長ホルモン使用の牛肉の取扱いをやめるなどの動きが出ております。
安全性に対してより慎重な人々が増えていることが考えられます。ロシアの件も考えると、豪州としては国内で売れなくなりつつある成長ホルモン入りの牛肉の輸出先を何としても確保、拡大しなければならないという事情があったと見るのが自然ではないでしょうか。
ロシアの措置に対する豪州側の事情をどの程度酌んで交渉に当たっていたのか。
八%の税率引下げは豪州側では思ってもみなかった収穫であるとロブ貿易・投資相が言ったとも伝えられております。
それは、ロシアに売れなくなった牛肉の売り先がすぐに見付かったこと、しかも初年度、冷凍は八%、冷蔵六%も税率が下がる、願ったりかなったりという意味ではなかったのでしょうか。
そこで質問なんですが、EPAによって質の高い農産物が安価で手に入ることは、もちろん消費者たる国民には利益があるとは思います。
ただ、これには安全性が大前提であります。
成長ホルモンを使った牛肉の輸入を促進すること、それも国内で売れなくなりそうなものの処分先のようにも取られかねないと考えます。
今後の交渉で安全性に関する何らかの担保を取ることが考えられるのか、この辺り、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(齋木尚子君)
日豪EPAにおきましては、衛生植物検疫に係る協力章という独立の章がございます。
この衛生植物検疫に係る協力章において、日豪両締約国は、WTOの衛生植物検疫措置の適用に関する協定に基づく権利及び義務を再確認すると規定をしています。
すなわち、これまで同様、我が国として必要と判断する場合には、衛生植物検疫措置の適用に関する協定に基づく措置をとることが当然できるということでございます。
また、さらに食の安全の確保の観点から必要が生ずる場合には、日豪経済連携協定の下で設置をされます衛生植物検疫に係る協力に関する小委員会で問題を提起し、協議することももちろん可能であります。
こうした協定の規定、そして新しく設置される制度を踏まえまして、今後の日豪EPAの運用において、委員御指摘の食の安全の確保についてはしっかりと適切に対処してまいりたいと考えております。
○田中茂君
ありがとうございます。
関税の引下げには一定の限度があり、数量セーフガード措置が発動されますが、それはあくまで輸入の増加に対する国内牛肉業者を守るための措置であります。
国民の健康とは関係ありません。
ホルモン剤投与の基準というのは、もちろんSPS協定上、科学的な証拠があることが求められること、また国内においては食品衛生法に基づいて安全性を評価した上で残留ホルモン剤の基準を設けていることは理解しております。
がしかし、EUは、アメリカで使用されている子牛への成長ホルモン剤は安全性に問題があるとしてアメリカ牛肉の輸入を禁止しております。
もちろんこれに対してアメリカは、二十か国以上で使用されている、安全だと主張し、WTOへも提訴しております。
そこで一審、二審共にEUの輸入禁止を違反との裁定が出ております。
それも承知しております。
しかし、EUは見直し勧告を受け入れていないんですね。
それは、EUは勧告を無視し、まさに違法状態が続いたままでありますが、EUは全く受け入れていない。
それはEU独自の考えであると思っております。
もちろんEUにはEU独自の酪農を守るという、そういう考えもあると思いますが、この点は、先ほど来から言っていますように、いずれ将来を担う子供たちが何らかの形で危害を与えられると、そういうことが決してないように、この辺は国民の安全性という面で更なる検討が必要だと思っておりますので、その点、よく検討していただきたいと思います。
次に、食用小麦の取扱いについて質問いたします。
今回のEPAでは農産物の中の重要品目である食用小麦は対象外でありますが、将来の見直し対象となっております。
日本は小麦の輸入国としては世界有数で、輸入量は全輸入量の四・六%、輸入相手国の上位はアメリカ合衆国、五五・九%ですか、その後、オーストラリア、カナダとなっております。
また、日本の小麦の自給率はほぼ一四%で、一般の食料自給率と比べてかなり低く、パンや麺類など大半を輸入に頼っていることを考えると、極めて重要課題と考えております。
今回の将来の見直しは、一定経過後に関税の取扱いについて見直すということですが、今後予想されるTPP交渉との絡みが、どのような方針を取るのか、そのタイミングとの兼ね合いについて外務省としての見解をお伺いします。
○政府参考人(齋木尚子君)
TPPでございますけれども、現在交渉中であります。
TPP交渉の妥結のタイミングやその交渉結果を予断することは差し控えさせていただきたいと思います。
ただ、そう申し上げた上で、仮にTPP交渉が妥結し発効したとしましても、TPPにより第三国に与えた特恵的な市場アクセスの結果として、豪州産品の日本市場における競争力に重大な変化がない限りは、日豪EPAの規定に基づく見直しの……(発言する者あり)申し訳ありません。
仮にTPP交渉が妥結しTPPが発効したといたしましても、TPPにより第三国に与えた特恵的な市場アクセスの結果として、豪州産品の日本市場における競争力に重大な変化がない限りは、先ほど委員言及の規定に基づいての見直しの対象にはならないということでございます。
そしてまた、仮に重大な変化があったとして見直しが行われた場合でも、その見直しの結果というものは何ら予断をされていないわけでございます。
日本政府といたしましては、豪州との間でこの規定に基づいて見直しを行う際には、国内産業の存立及び健全な発展と両立し得るよう、また、生産者の皆様が意欲を持って経営を続けていくことができるように全力を挙げて見直しの協議に臨みたいと考えております。
○田中茂君
ありがとうございます。
時間がないんでこれで終わりにしたいと思いますが、本当は酪農についてもちょっとお聞きしたかったんですが、今度の機会にさせていただきます。
ありがとうございました。