元参議院議員 田中しげる

しげる的 政治のキホン | 田中しげるの視点で、日本の今を説く

日本人のアイデンティティ
外交 2014/08/16

ブラジルで開催されたサッカー、ワールド・カップでは、日本代表は惨敗に終わりました。しかし、初戦のコートジボワール戦終了後、日本人サポーターが客席を掃除する姿がメディアに公開され、全世界から絶賛されました。リオデジャネイロ州政府環境局は、「彼らの行動を我々の御手本としたい。」と、サポーター代表の駐リオデジャネイロ日本総領事高瀬寧氏に表彰状を贈りました。これに対し総領事は、「日本の学校では下校前、生徒たちが教室を掃除する文化がある。」と紹介したとのことです。

日本人には清潔さや礼儀正しさに対する独特の考えがあります。小中学校で自分たちの教室その他の施設を掃除することにも表われていますが、その基本精神は教育によるものではなく、更に深遠なる日本の歴史や文化、伝統そのものに根差しており、自然に身についてきたものです。私たちの遠い祖先は山や川、石や樹木、鳥や獣など自然に存在するあらゆる物の中に精霊や神、仏の存在を信じ、畏敬の念を抱いてきました。その祖先の血が脈々と受け継がれ、私たちのアイデンティティの核を形成しています。サポーターたちの行動は、その核に組み込まれた日本人の精神の表れであります。自らの体を清潔に保ち身の回りもきちんと整理整頓する。自然を汚さない。常に精霊や神様、仏様が凝視されている。美しく清掃された日本の道路や地下鉄などは、海外からの観光客に称賛されていますが、これは日本人が昔から行なってきたことであり、我々にとってはごく当たり前のことなのです。

「保守」とは、このような日本の美しい自然や歴史、文化、伝統、精神を守って次代に伝えていこうという立場です。安倍総理の「美しい国」という概念も同様のことなのだと考えます。保守とは何も陋習を頑迷に守り通すということではありません。変遷する時代のニーズを真摯に受け止め、民族が悠久の歴史の中で育んできたものと融合させ、その上で更に民族の歴史、文化、伝統を発展させていくことなのです。保守主義の父と呼ばれる英国の政治家、エドマンド・バークは「保守せんがために改革する。」と述べています。

サッカーのサポーターたちの行動は日本人にとってはごく普通のことですが、世界から称賛され、日本人が改めて見直されたことは、ゲームの1勝以上の価値があったといえます。

日本に生まれ育ち、一生を過ごしたいと言える「誇りのもてる国」
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